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<第1回>
労働組合の現状と人材育成の問題点
有限会社アプレ総合研究所
代表 鹿野和彦
時代環境の変化で低迷する労働組合
今、働く人の環境は大きく変化しています。「終身雇用」「年功序列」「正社員中心」といった日本型雇用慣行は崩れつつあり、転職してキャリアアップを図ろうとする人々の増加、あるいは能力主義・成果主義への転換、雇用形態の多様化が進展する中で、新たな働き方のルールの確立が模索されているのが今日の状況です。当然、そうした雇用慣行の変化は働く人の不安や負担を増大させており、働く人を代表する組織である労働組合は、時代環境の変化に的確に対応し、働く人の立場からあるべきワークルールを構築する役割が期待されているといえるでしょう。
ところが現実の労働組合を見た場合、旧来の雇用慣行を前提とした活動にとどまっている労働組合が多く、実際の働く環境との間にギャップが広がっています。また、企業内労働組合の殻に閉じこもった活動は、暮らしや社会全体の環境変化に関する対応力を希薄化させており、CSR(企業の社会的責任)の観点からも有効な企業統治を構築できない労働組合が少なくないのが今日の状況です。
現在、労働組合の組織率は20%を割り込み、若年層を中心に「労働組合を知らない子どもたち」が急増していますが、労働組合運動の危機を克服するためにも、これまでの自らの活動のあり様を真摯に総括していくことが必要です。そして21世紀の労働組合としてふさわしいミッションを再構築するとともに、活動および組織運営を担っていく人材育成に対してより明確なビジョンを持つことが大切ではないでしょうか。
思いつきと惰性の人材育成からの脱却を
労働組合は「人材」こそが最大の財産です。働く人々の自主的な組織である労働組合は、「人材」が持つウエイトが大きく、組合員をリードする執行部の能力や資質が当該組合の活動や組織運営の成果に直結するといっても過言ではありません。したがって、労働組合を活性化するには次代を担っていくリーダーを育成していくことが重要であり、従来にも増して人材育成に力を入れていく必要があります。
もっとも現実の組合教育を見た場合、明確なビジョンのもとで人材育成がなされているケースは必ずしも多くはありません。たしかに、多くの労働組合がリーダー育成を意図したカリキュラムを構築し、かつ多様なテーマで研修活動を展開しています。しかし、その内容は他労組で取り組んで評判が良かった研修を目的の検証なしに採り入れたり、従来と同様のカリキュラムを講師やテーマだけ変えて実施するものが多く、極論すれば「思いつき」と「惰性」によって人材育成がなされているケースが少なくないのです。
同様に、研修手法についても講義型の研修を年に1〜2回実施するだけで終わらせているケース、あるいは、役員の任期やキャリアを考慮することなく一律型の研修カリキュラムを組んでいるケースが圧倒的で、残念ながら「人材こそが財産」という言葉とは裏腹の状況にあるのが労働組合の教育状況だといえます。
さらに、効果的な人づくりを行なうためには、人材育成とリンクした評価制度の構築が必要ですが、「労働組合に評価はなじまない」等の理由で評価制度の構築に至らない労働組合、あるいは労働組合と企業組織とではミッションが異なるにも関わらず、企業の評価制度と同様のものを導入するところでとどまっている労働組合が大半です。そのため、せっかく人材育成システムを構築しても狙い通りの人材育成ができないことが多く、結果として労働組合の活性化につながらないといった悪循環を生んでいるといえるでしょう。
現在、多くの労働組合で「役員のなり手がいない」「役員になったはいいが、どのように活動をリードし、組織を活性化していけばいいかわからない」との悩みが顕在化していますが、労働組合を再生するためにも、あらためて人材育成の方向性を明確に打ち出すことが必要です。そして、リーダーはリーダーとしての能力・資質を身につけ、21世紀の労働組合を創造していく誇りを取り戻すことが大切ではないでしょうか。
第2回:21世紀のユニオン・リーダーとは?
第3回:労働組合における人材育成の処方箋
●鹿野和彦(かのかずひこ) プロフィール
1983年早稲田大学卒業。91年株式会社アプレコミュニケーションズ設立、代表取締役就任。
各種メディアの編集・企画、教育・研修事業に携わるとともに、労働組合の客員アドバイザーなども務める。99年高崎経済大学客員講師。2005年にシンクタンク「有限会社アプレ総合研究所」設立、代表就任。企業・労組、行政・自治体、NPOを対象に教育支援、コンサルタント事業を展開する。
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